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2012.11.19 Monday
第39回 常に危機管理意識を忘れずに!総選挙も同じ感覚です!
 

 いよいよ、次期政権を何処の政党に託すか、我々国民全てが直接その選択を迫られる衆議院総選挙が行われる事となりました。我々国民の目の前に存在する実に様々な危機=リスクを如何に上手に回避しながら将来の我が国の在り様を模索していくのか。この事を、今回の議会選挙を通じて直接問い掛けられている事を、どれ程の国民が理解しているのか、自分自身を含め、若干心もとない気もします。然しながら、三年半前の様にマスコミの報道に一方的に踊らされる事無く、何はともあれ、真実を見極める目を持って真摯に我々固有の権利である選択権=投票権を行使すべきと考えます。次の数年間の内に構築されるであろう近未来の我が国の姿が、我々の次世代、次々世代の日本人にとって様々な意味で「誇り高いもの」であるように、考えた上で選択権を行使すべきであり、世界中から「衆愚政治」との非難を受けることの無いよう心すべきである事、賢明な読者諸兄姉に対しては言うまでも無いと思います。

 

さて、遅くなってしまいましたが、今回のブログでは、前回にお約束した小生のケンブリッジ大主催国際会議での今年のスピーチ=拙稿のうちの一つに関し、その概要を掲載します。従って、今回のブログは読むのに厭きが来る程長い事を覚悟して望むべし!

 

前回、掲載に大騒ぎした同大の栄誉証受賞の「証拠写真」は、小生のPCに関する信じられないほどの技術的未熟さ=無知さにより、掲載を断念しています(旬刊誌「財界」11月13日号59頁には掲載されました。証拠写真を公開していますので、あの話は「嘘」ではありませんから、悪しからず!)。今回掲載するこの拙稿が、特に企業経営者や投資家の方々に少しでもお役に立てればと願っています。

 

Old Threats and persistent risks – when will we learn?

 

 当セッションの主テーマである「Old Threats and persistent risks – when will we learn?」に関して、これを正面から論じる事は非常に困難であり、また、その議論も多岐に渡って甲論乙駁する結果となる可能性が高いと考えられる。そこで、自分としては、この限られた発表時間を有効に活用する為に、企業価値を判断する際のメルクマール、特に、企業の財務情報以外の重要要素に関する情報について分析し、関係各機関が世界の企業に対してこれらに関する更なる情報開示を要請する必要性について論述してみたいと思う。

 

 2008年のリーマン・ブラザーズの経営破綻に端を発した世界同時不況や現在も続く欧州債務危機問題、度重なる世界的な経済危機により各国企業の競争力は著しく減退し、当然に我が日本経済にも甚大なる影響を及ぼしてきた。更に2011年3月の東日本大震災の発生とタイの大型洪水問題の発生による世界的サプライチェーンの崩壊など、各国企業の経営や社会経済に与えた影響に関しては言及する必要も無いだろう。特に日本企業は震災による様々なダメージに対処し、不断の努力による業務の復旧と新たな成長に向けての取り組みを進めつつある。更なる成長に向けて、企業はこれまで以上にマーケティングやR&D、グローバル事業展開、人材育成等、多面的な活動を展開してきているのも事実である。

 

 企業活動を推進していくに当たっての重要な活動の一つに、様々なステークホルダー、特に株主・投資家に対する自社の現状に関する情報提供が最重要課題ともなっている事は言うまでも無いだろう。株主・投資家からの自社に対する関心・注目を集める為には、自らの組織の成長に向けた商品やサービスのイノベーション改革に尽力する事は勿論、投資家の投資判断に資する適時・適切な情報開示とコミュニケーションを更に強化する事が重要である事は言を待たない。その意味で“IR”は、企業と投資家を結ぶコミュニケーションそのものであり、企業が自らの投資価値=企業価値を伝える重要なプラットフォームでもある。しかしながら、これまでの多くの企業IRでは、過去・現在の財務情報を中心とした情報発信、つまり“財務体質の実態”の開示にのみ注力して来た実態があるが、いまや、こうした情報だけでは企業の価値を評価するメルクマール足り得ないという投資家の変化が顕著であり、特に、リーマンショック以降は企業のサステナビリティを如何に評価するかが判断のポイントともなってきている事実に世界の企業が漸く気付き始めているのも事実である。

 

 企業を取り巻く環境は大きく変化してきている。世界的な経済危機の発生やグローバル化の進展での社会的課題の顕在化、更には顧客の価値観=ニーズの変化と言った企業経営に直接的影響を及ぼす課題に直面している状況において、企業価値の評価に当たっては、単に財務体質の実態に関するものだけでなく、更に広範な状況が必要になってきている。事実、これまで有価証券報告書をはじめとしてCSRレポートや環境報告書、更には年次報告書など多岐に渡る情報開示書類が作成、公表されているが、その情報量の膨大さ・詳細さに加え各報告書間・情報間の関係性が不明確な現状においては、投資家側でもこうした情報の理解が充分行ず、また、企業の将来性を判断する為の材料として使いこなせていない状況にあるといっても過言ではない。従って、企業が達成すべき眼前の大きな課題は、既存株主等に対する説明責任を強化すると言う目的だけでなく、現在・未来の株主に投資判断を適切に行える多角的な情報を可能な限り分かり易く伝達する事で自社の“社会的存在価値”に対する理解を促進する事であると言えよう。つまり、各企業に対して、こうした厳しい環境であるが故に、開示情報の充分性や分かり易さという観点を踏まえ、全てのステークホルダーに対する情報開示やコミュニケーションの方法に関して改めて見直す必要性が高まっている事を認識させ、改革を促さなければこうした問題は到底解決し得ないところに来ていると考えられる。

 

 ここで、企業価値とは何かに関して改めて考察してみたいと思う。投資意欲を喚起する為には、如何なる情報を提供すれば企業の“価値”を投資家や社会に理解してもらえるのだろうか。これまでは、一般に、投資家は、企業が投資に値し得る組織なのかを判断する為に、当該企業の組織理念や経営戦略、更には過去・現在・未来の収益実績や見込み、収益性・安定性・成長性と言った財務体質等の様々な観点から企業の“将来性”について評価しようとしてきた。その為に、企業は、これまで“財務体質”や“有形資産”を中心とした情報を提供してきた。承知の様に、近年は、こうした財務資本や有形資産と同等或はそれ以上に“知的資産”や“ガバナンス体制”、“レピュテーション”と言った“無形資産”が企業価値評価の構成要素として強く意識されるようになった。当然に、企業価値の評価に当たっては、過去や現在の指標である財務数値が如何に素晴しい結果を示していたとしても、余り意味は無く、未来の収益見込みを達成するだけの価値を有しているかどうかの判断基準としては、“経営基盤”・“企業理念=風土”・“技術”・“人的資源”等の無形資産に関する情報が重要な要素である。市場価値の残余部分は無形の“資産”であり、先に述べた人的資産や知的資産、環境資産、社会資産等がこれに当たる。企業価値とは、要は、金銭的な指標によってのみで表されるものではなく、企業の成長に向けた多面的な視点によって表現され、評価されるべきものであると言えよう。

 

 こうした変化の背景には、世界レベルでの社会・環境の変化と課題の顕在化、つまり、世界人口の増加やグローバルな資源・環境問題の顕在化、企業経営の不確実性の増大、更には、企業不祥事の続発等の発生が存在している。財務体質が如何に磐石であっても、コンプライアンスやガバナンス、環境問題への配慮等、社会的公器としての適切性が欠如していれば、持続的な成長の実現が不可能である事を、これまでの歴史がしっかりと証明してきた所以でもある。また、こうした考え方は、国際的な制度設計としても検討が進められており、既に2006年には国連が“責任投資原則(PRI: Principles for Responsible Investment)”を公表して以来、例えば、ESG(環境・社会・ガバナンス)情報をはじめとする非財務情報の評価が一般的な投資判断基準として認識されるようになってきた。PRIが投資プロセスにESG要素を組み入れる事を宣言している事から、ESGに関する情報開示の要請は高まりを見せており、小生が独立社外役員を務めた三菱商事では既に数年前から次のように宣言し、自らのESGに関する取り組みをあらゆる機会で説明してきている。つまり、“継続的企業価値の向上の為には、経済的価値と環境価値、更に社会的価値を向上させる事が重要であり、その為にこそガバナンスが存在する”と。蓋し、真実の考えである。

 

 また、一方では、これまでの財務情報を中心とした開示のみではなく、財務情報と非財務情報とを合わせた新しい情報開示のあり方についても議論が進んでおり、小生も日本サイドのメンバーであるが、国際統合報告評議会(IIRC: International Integrated Reporting Council)において統合的な情報報告に関するフレームワークの構築が進められているのも事実である。

 

 企業は、自らの経営活動を磐石なものにする事は勿論、投資家の企業評価に資する情報提供を目的として、必要な非財務情報の開示を積極的に進めることが強く求められる。この両種の情報の発信は、自らの組織のビジョンと戦略をより一層明確にし、更には、自らに対する社会的理解と評価を大きく向上させる事に資するものである事を認識すべき時が来ている。今こそ、過去の経験から何が真実であるかを真摯に学ぶ事、それが世界経済の復活にも繋がると心から信じている。

 

 以上が、今年のケンブリッジ大主催国際会議の小生のスピーチのうちの一つに関する概要です。誰だ?読むのに疲れたとか何とか言ってる読者諸兄姉は!冒頭に記述した総選挙に関する各政党、候補者の考え方に関する情報開示も、同じ事で、充分に理解した上で判断を下さないと、またまた『騙された−!』とか何とか、自分自身で嘆く事になりかねないよ。そうならないように、「過去の経験から何が真実であるかを紳士に学ぶ気持ちを持つこと」が本当に大事だと心底思います。読者諸兄姉は如何お考えか?

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