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2008.12.12 Friday
第4回 今こそ「謙虚さ」を忘れないようにしよう!

 海外を含めてこのところ毎週のように出張が続き、加えて、小生の生来からのズボラ癖が強く出ていたために、当ブログの更新が遅れ気味になっていた事を先ず始めにお詫びしたい。

 一方で、弊事務所の「怖い」K女子が、読者諸兄姉と同様に、小生のズボラさにとうとう業を煮やして、曰く、「皆待っているのだから、早く更新用の原稿を書いてください!私だって待っているのだから!」との言。
事此処に至っては、これ以上抵抗する姿勢を見せても全く無駄な事と覚悟せざるを得ず、時間の許す限りと今回も筆を執りました。

 それにしても、経済の混乱は目を覆うばかりです。企業の内定取り消しどころか、地方自治体も同様の動きを示し始めました。こんな事は、歴史上も極めてきわめて稀な事ではないかと思いますし、小生の記憶でも正直存在しません。今回の混乱に対処する欧米及び中国を始めとするアジア諸国政府の迅速な政策決定に比べて、第二次補正予算すら準備できない我が政府の無為無策ぶりに対しては、怒りを通り越して「悲しい」思いで一杯なのは、一人小生だけなのだろうか?


 羹に懲りて膾を吹き、貸し渋りや貸し剥がしに奔放、本来の役目を放棄した金融機関が存在するのなら、意味の無いばら撒きに近い2兆円の景気浮揚予算の支給方法に論議して時間を浪費するよりも、当該予算を困窮する中小企業中心の緊急融資対策に使用したほうがどれだけ効果的か、火を見るよりも明らかなのに誰も何も言わない。
 2兆円の予算、例えば1社当たり1000万円の年末融資に振り分ければ、実に20万社に行き渡る。3人・5人で頑張っている中小企業の運営を支援すれば、その分だけ雇用の確保につながり、国民の安心感がどれだけ増す事か。
 このところの倒産件数は、上場企業も含めて戦後最大となっており、それだけ雇用不安が存在すれば、先行き不安に駆られて消費が低迷するのは当然であり、一方で、年末に掛けて、社会不安の増大から犯罪件数も増加するのではないかと真剣に危惧される状況だ。
 倒産する業種も、一時の不動産や建設業界のみでなく、小売・飲食中心のサービス業、果ては製造業まで、全産業に及んできた。何年続くか分からない今回の「未曽有」の経済混乱だが、国を支える企業活動の活性化を図り、何よりも先ずは雇用の確保を優先する政策こそがこれほど強く望まれている時代は無いのではなかろうか。

 今回の混乱の引き金を引いた「サブ・プライム問題」に関する解説は必要ないほど全ての国民が理解していると思う。日本が他国よりも深刻なのは、経済そのものの脆弱性が完全に露呈しているからだ。
 失われた平成の20年間と一般に言われるが、GDPやその他指数の伸びの数値は偽りに近い。因みに、平成元年に銀行に預金した1万円が金利込みで平成20年に何円になっていたか、想像出来ますか?
 当然に普通預金で、実に10,479円にしかなっていないという現実。
20年間で「479円」の成長とも言える金額です。
 驚愕というよりは、「仰天」(あまり違いは無いか?)に近い感じです。(この数字は小生の実経験からのもので、試算したものではありません。念のため。)
 
 ところで、最近の米国の自動車業界首脳によるワシントンでの失態はTVなどで見ていたとおりです。サブ・プライム問題を引き起こした金融界も変わりないものだということは改めて強調する事でもないでしょう。
 特に米国では、エンロンやワールド・コム事件が発生してからわずか6−7年後の今回の混乱発生です。ガバナンスや内部統制システムの整備に関して、「アングロ・サクソン・スタイルがグローバル・スタンダード」と強調してきた結果がこの有様です。
 こうした状況は、何も米国に限った事でなく、我が国でも散見されています。背景に「驕り」が多少でも存在していたとすれば、それこそ大いに反省すべき事であり、「驕り」の存在を気付いていなければ、致命傷になります。


 思うに、人=企業=組織は、一つの「成功」に酔い易い傾向が往々にしてあります。
 「成功」が華々しければ、華々しい程、その余韻に浸っていたくなります。つまり、この状況が何時までも続く、「夢は醒めない」と信じ、錯覚に陥り易いものです。
 しかし、時間は刻々と過ぎて行きます。時間の経過とともに、状況は変化し、社会の価値観も変化して行きます。成功に酔っていると、その変化に気付かず、何時までも従前の方法論に固執して、それが正しいと信じて疑わない。

 将来の不確実性=リスクの分析を怠り、リスクの発生に備える準備を怠る。リスクは常に変化します。一度リスク・ヘッジを対処したら終わりと言う事は無いことに気付かない。それこそが最大のリスクなのです。常に変化する社会=時代を見据え、自らを変化させる努力を怠らない事が重要なのです。そうでなければ「流れ」に取り残され、「崩壊」の足音を聞くことになる。

 政治でも、企業経営でも、個人生活でも、全て同じことが言えると思います。変化を先取りし、変化に的確に対処すること。18世紀の生物学者ダ−ウインはその著「種の起源」でこう書き記しています。『生き残る種とは、強いものでも、賢いものでもない。変化に的確に対応しうる種が未来に子孫を残し得る。』と。蓋し名言といえます。

 従って、変化を先取りし、その変化に的確に対応するためには、「驕り」があってはならない事になります。社会=時代の変化を的確に掴む為には、常に「謙虚」に周囲を見渡す知恵と力が必要です。「謙虚」とは、周りにへりくだる事ではありません。何か人知を超えた大きな力に対して、自らの言動等は間違っていないか、恥ずべき事はないかを問い掛け、その声に真摯に耳を傾ける事を意味します。
 宗教的な話をしているのではありません。


 「人知を超えた大きな力」とは、自らが生存するこの現実社会そのものかもしれませんし、自らの内に存在する「良心」=「精神」=「熱情」なのかも知れません。
 「謙虚」に周りを見つめ、変化を的確に捉えて、必要な行動に出る事、これこそが古来受け継いできた人間の知恵なのかも知れません。それを忘れて、一時の成功に溺れ、「生存」そのものさえ危うくさせる可能性のある現代の過ちを、今こそ修正する必要があると考えます。


 常に「謙虚」たる事。未来を恐れず、勇気を持って先に進む事。簡単なようで、実はかなり難しい事かもしれません。
 今回の経済混乱に関して、
国のブッシュ大統領も、次期大統領のB・オバマ氏も、ルーズベルト大統領が1930年代の同様の混乱期に国民に告げた以下の言葉と同様のメッセージを伝えたと謂われています。

 『米国民よ!我々が一番恐れなくてはならないのは、我々自身の心の内に潜む恐怖心そのものだ!今こそ、内なる恐怖心を捨て、勇気を持って前に進もう!』と。


 翻って、我が国は如何でしょう。少なくともこの事は言えます。「謙虚」たれ!と。政府も企業も、そして我々自然人もです。「謙虚」に「勇気」を持って前に進む努力だけは他国に負けないようにしましょう。決して!

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